広島大学ラジオセミナー・新しい時代の哲学─この世と出逢い直すために─ 聞き手:桑原 しおり(RCCアナウンサー)
生きて在ることの、どうしようもない不安や悲しみにかられたことは、どなたにもおありのはずだ。在ることの無意味さ、はかなさ、より所のなさを、呪った記憶もおありかもしれせん。
ですが、在ることのそんな暗く否定的な性格(無根拠・無目的・無常・死の定め)自体が、じつはあることの最大肯定の論拠となるのだとしたら、どうでしょうか。
生きて在ることなんてつまらないと言い切ってクサッていること自体が、もっとその先にある悦びへ至る道を、ふさいでいることにならないでしょうか。
事実そのとおり。在ることの否定的で暗い性格自体が、じつは哲学的にクールに考え突きつめると、在ることの最大の肯定性(神秘・奇蹟)を論証しています。この奇妙な逆説を、つまりは哲学の根本の考え方を、どなたにも心の底から実感できるようくわしく語ります。そして、この存在の大肯定をベースにおのずから湧き出てくる、新しい時代の生き方や倫理を展望します。

ゲスト:古東 哲明(大学院総合科学研究科 教授)
<放送のご案内>
  第1回 第2回 第3回 第4回 放送時間
放送日(毎週土曜) 11月4日 11月11日 11月18日 11月25日 午前6時00分−6時30分
※放送時間が変更になることがありますのでご承知おき下さい。

第1回 この世と出逢い直す技法、あるいは哲学
哲学は、《在る》ことへの驚きの感覚(タウマゼイン)を取り戻し、世界とあらためて出逢い直す技法です。
その醍醐味や歓びや意義を、映画や雲の不思議なありかたを手がかりに、具体的に実感していただき、否定的なもの(たとえば死)を肯定形へ変える、哲学の息づかいと凄みと技法をお伝えします。
第2回 日常という奇蹟──存在神秘の証明
この世この生の無意味さ・はかなさ・よりどころのなさが、じつはこの世この生の最大肯定の論拠であることを、旅、遊び、恋愛、団欒、芸術などの具体的現象を通じて、明解にお話しする。
存在それ自体がとほうもないご馳走であることを知れば、さらに「共に在ること」の不思議さの念も浮かび上がるはずです。
第3回 世界劇場論──新しい時代の自己
世界劇場の考え方を導入することで、わたしたち人間存在の正体を、「何者でもないもの(ウーティス)」として見届けます。そうした世界観と自己論をふまえるとき、こうして当たり前のように他者と「共に在ること」の、とんでもない不思議さと深さとが、自ずから論証されてもきます。
第4回 海のように生きよう──共に在る不思議と歓待の倫理
在ることの不思議と共に在ることの凄さとをベースにして湧き出てくる、新しい時代の生き方や倫理を模索します。
それは、《いやなこと・ゆるせないこと(悪)を、ゆるせないまま嘆き哀しみながら、それでもなおゆるそうとする》、じつに逆説的なライフスタイルとなることを、平易な言葉でお伝えします。


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