第1回 町を歩いてみよう :もっと使いやすい公共交通機関 | ゲスト:
清水 一(広島大学大学院保健学研究科 教授) |
電車やバスに乗って、郊外から広島市内に出かけてみましょう。普段何気なく利用しているところに、実は、たくさんの物理的なバリアがあることがわかります。特に、運動機能障害者(車いす利用者)、視覚障害者、聴覚障害者、高齢者にとっては、不便なことがあふれています。同様の不便さは、たとえば、ベビーカーを押している母親や大きな荷物を持っている人たちにもいえます。コロ付きの大きなスーツケースを引いて海外から帰ってくると、駅についた途端、そのスーツケースをかついで階段を登る大変さはよく経験することです。番組では、 広島駅を中心として、改良された点と課題として残されている点を紹介します。さらに、駅や交通機関だけを改良するのでは十分でなく、困っている人をさりげなく助けることができる人を増やすことが肝心です。そこで、番組ではそのようなボランティアを養成する取り組みを紹介します。 |
第2回 学校から変えましょう | ゲスト:落合 俊郎(広島大学教育学研究科 教授) |
教室は未来の社会です。日本を共生社会に変えるには、学校を変えなければなりません。いままでの特殊教育から特別支援教育に変わろうとしています。いままで、本人や保護者の責任とされていた軽度発達障害児の教育が始まろうとしています。そして、小・中学校の一般教室のなかの6.3%の子どもに軽度発達障害児と同じような特徴をもっているという調査結果が出ています。手厚い教育を別な場所ではなく、ユニバーサルデザイン化した授業にすることにで、落ちこぼれのない学級経営を行なおうとしている学校も出て来ました。ユニバーサルデザイン化した授業が発展したインクルージョン教育では、障害のある子ども、外国籍の子どもや異なる文化をもつ子どもも一緒に勉強できる環境を準備することがゴールなのです。世界で最も高齢化しながら人口減少が起きている国、OECDの中で最も債務を抱え込んでいる国の明日を考えるためのユニバーサルデザイン化した授業が必要なのです。 |
第3回 正確で分かりやすいコミュニケーション作り :情報バリアを取り除く | ゲスト:吉原 正治(広島大学保健管理センター 教授) |
情報を入手したり、思いを伝え、理解しあうなど、コミュニケーションはとても重要なものです。その手段は、声、言葉、文字、身振り、図形、IT機器など様々ですが、聴覚や視覚に障害がある場合など、情報バリアが生じることがあります。一方、コミュニケーションは、おおまかに伝われば用が済むこともありますが、中には極めて正確性が要求される場合があります。その一例として病院にかかるという場面があります。第3回目は、 医療の現場を一つの例として、正確なコミュニケーションを図るために、情報のバリアを取り除く工夫を紹介し、誰にでも分かりやすい情報のユニバーサルデザインを検討します。 |
第4回 未来を担う人材の育成 :大学の取り組み | ゲスト:佐野(藤田) 眞理子(広島大学総合科学部 教授) |
これまで、公共交通機関、学校教育、医療の分野における、物理、情報、制度、心理的なさまざまなバリアを検証し、みんなにとって暮らしやすい「ユニバーサルデザイン」のあり方について紹介してきました。共通しているのは、「ユニバーサルデザイン」というのは単に、建築様式やモノを皆が使いやすいように作り変えるということに限定されるのではなく、むしろ「共に生きること」を目指した人々の考え方、社会のあり方に関する意識改革と、その実践が主体となります。そのためには、普段からさまざまなニーズのある方々との交流経験を通して、新しい考え方・知識・技術を身につけた未来を担う人材を社会に送り出していくことが、高等教育機関の使命だと考えます。そこで、最終回では、ユニバーサルデザイン化を念頭においた広島大学の人材育成の取り組みを紹介し、未来に向けた展望を紹介します。例えば、障害のある学生の支援と「ボランティア活動室」の取り組み、音声認識技術を活用した教育支援方法の開発と実践、アクセシビリティ・リーダー養成プログラムなどを紹介します。 |