第1回 海に浮かぶ社殿の誕生 |
ゲスト:三浦 正幸(広島大学大学院文学研究科 教授)
ゲスト:古瀬 清秀(広島大学大学院文学研究科 教授)
ゲスト:西別府 元日(広島大学大学院文学研究科 教授)
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世界遺産・厳島神社が鎮座する宮島は、「神をいつきまつる島」といわれ、長いあいだ「人間が居住しない島」
だったと考えられてきました。しかし、近年の考古学的遺物の出現は、この説に多くの疑問をなげかけています。
平安時代の末期、平清盛の卓越した発想によって現在の社殿の原型が建設され、それが厳島神社を世界遺産に
認定される根拠となりましたが、清盛以前についてはいまださまざまな疑問が残されています。
講座では、このような問題の一端を紹介し、今後の厳島研究の課題について考えます。 |
第2回 中世の崇敬の広がりと社殿再興 |
ゲスト:岸田 裕之(広島大学大学院文学研究科 教授)
ゲスト:妹尾 好信(広島大学大学院文学研究科 助教授)
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厳島は、中世から内海水運の要港でした。町衆や寄島する各地の商人・文化人・芸能人らによって、祭礼と融合した文化の成熟が
はかられました。五重塔の初重には須弥壇の跡があります。明治初年の神仏分離によって取りはずされ、そこに安置されていた
釈迦三尊像はいま大願寺で拝観できます。初重の16本の柱には、15〜16世紀に活動した有の浦や廿日市、
そして厳島神社領の武士的商人、その女房らの名が墨書してあります。本殿は毛利元就の造営ですが、
こうした多くの人々が、神社信仰を支え、広げていったのです。 |
第3回 古典文学の中の厳島 |
ゲスト:妹尾 好信(広島大学大学院文学研究科 助教授)
ゲスト:久保田 啓一(広島大学大学院文学研究科 教授)
ゲスト:狩野 充コ(広島大学大学院文学研究科 教授)
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中世から近世にかけて作られた古典文学の中に描かれた厳島を見ることによって、時代を超えて日本中の人々に重んじられ、
愛されてきた厳島神社の様相を把握します。中世では、軍記物語の代表作品『平家物語』の厳島関連記事と、厳島神社の由来
を語る絵物語『厳島縁起』を紹介します。近世では、伴蒿蹊や大田南畝の紀行を取り上げ、彼らの関心の所在を探ると共に、
十返舎一九「続膝栗毛」に観光地としての宮島の描かれ方を見ます。漢詩では、僧侶や文人が残した数多くの作品の内、
島内八つの景物を詠んだ「厳島八景詩」を何首か取り上げて、漢詩に詠まれた厳島の世界を見てみます。 |
第4回 “信仰と観光の島”としての厳島 |
ゲスト:勝部 眞人(広島大学大学院文学研究科 教授)
ゲスト:フンク・カロリン(広島大学総合科学部 助教授)
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江戸時代以来、厳島はしだいに“観光の島”としての位置を占めはじめます。天保期の『芸州厳島図会』には、市が立ち、
歌舞伎が行われ、遊郭で遊ぶ人々などが描かれています。明治時代にも、風光の明媚さや避暑の場として、外国人客も含めて
多くの人が訪れています。しかし、本来そこは信仰空間であり、明治期になってもさまざまな絵馬が奉納されています。
管弦祭など祭りの場には、大勢の人々が参詣しました。今人々はどういう意識で厳島を訪れるのか、
今後島をどうしていくべきか…なども含めながら、「信仰と観光」の点からとらえ直していきます。
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