第1回 お酒について | ゲスト:
家藤 治幸(酒類総合研究所 環境保全研究室長) |
「古い文明は必ず優れた酒を持つ」との言葉があります。世界的にお酒にはワイン、ビール、日本酒のような「醸造酒」、ウイスキー、ブランデー、焼酎のような「蒸留酒」があり複雑そうですが、酵母による発酵を主体とした醸造様式から整理すれば簡単です。そうしたお酒の分類、また酵母によるアルコール発酵の仕組みや、銘醸地西条での日本酒造りの工程を見ての解説など、お酒についてわかりやすくお話ししたいと思います。酒造りはバイオテクノロジーの源流と言われますが、その技術は今後のエネルギー問題、環境問題へも大きく貢献しうるものです。そのような可能性についても紹介します。 |
第2回 酒と水と環境 | ゲスト:佐々木 健(広島国際学院大学バイオ・リサイクル学科 教授) |
西条は灘、伏見とならぶ日本三大酒どころです。西条のまれにみる中硬度名水は、酵母のアルコール発酵を弱からず強からず程よく制御し、また優れた発酵技術にも支えられて、あの良い香味とまろやかな味覚の広島酒を醸成するのです。竜王山山系の豊かな自然が、流紋岩と花崗岩の入り混じった地質と相まって、西条のあの名水を生み出します。良い環境がまさに名酒を生み出しているのです。広島大学は毎年学生参画の活動で、西条酒造組合の人たちと共に竜王山の植林及び林の手入れを行っており、地道に環境を守り、貴重な酒造名水の保全に貢献しています。 |
第3回 「酒粕」の機能性と利用 | ゲスト:杉山 政則(広島大学大学院医歯薬学総合研究科 教授) |
昔から酒や酒粕にヘルスケア機能性があることは体験的に示唆されています。私は、現在 文部科学省の知的クラスター創成事業のプロジェクト研究を推進し、主に、醸造副産物のヘルスケア機能性を科学的に追及しています。例えば、酒粕・焼酎粕に、メラニン色素生成に対する阻害物質や皮膚炎に対する改善効果を有する物質を見つけ、それら物質の化学構造と作用機構を調べています。最近、これらヘルスケア効果を利用した入浴剤を広島地域の醸造会社と共同開発したほか、酒粕・焼酎粕中に乳酸菌の増殖促進因子を発見し、それを活用した新ヨーグルト製造技術を広島県内の乳業メーカーと一緒に確立しました。 |
第4回 古くて新しい微生物「酵母」 | ゲスト:宮川 都吉(広島大学大学院先端物質科学研究科 教授) |
酵母は日本酒を始め、あらゆる酒類の醸造およびパンの製造に利用される、私たちの生活に古くからなじみの深い、有用微生物の代表格です。酵母は単細胞で生活する微生物ですが、最新の酵母研究から高等生物の生命の仕組みの理解につながる重要な手がかりが数多く得られました。また、ガンを始めとするヒトのいろいろな病気のメカニズムを解明するヒントが得られるので、酵母は一躍生命科学研究の「花形モデル生物」になりました。"単細胞"は芳しくないことのたとえのように使われますが、この機会にぜひ単細胞生物「酵母」のイメージを一新し、「生命」の認識を新たなものとして下さい。 |