第1回 食と健康 | ゲスト:
烏帽子田 彰(広島大学大学院医歯薬学総合研究科 教授) |
〈衣・食・住〉は古来から健康を支える大前提です。しかし、現代は、この健康の当然の前提である要素が、却って人を不健康に、時として、障害=病気を引き起こす身近な原因になっています。例えば、あまりにも自然素材から遠のいた〈衣〉・シックハウス症候群に象徴される〈住〉・食物連鎖が断絶され、かつ、当たり前の食材が消退し工業製品的に製産・流通・調理・供される〈食〉です。[食はどうあるべきか]の素朴な問いに対し、食材の生態環境系の位置づけ、栄養としての食・食材等から、食・食卓の健康・健全・美味・楽しみを検証・再考し、さらに、健康増進・保健を謳う〈食品・サプリメント〉の是非について考えます。 |
第2回 食生活の変化と食卓の力 | ゲスト:望月 てる代(広島大学大学院教育学研究科 教授) |
世界一の長寿国である日本。その原動力ともなった日本人の食生活ですが、現在様々な問題が生じています。豊かになったといわれる戦後の日本人の食生活を振り返って、栄養素や食品摂取量の変化、食材料の変化、食をめぐる環境の変化等について解説します。食生活には、生命に必要な栄養素等の物質を摂取する機能、食欲・嗜好を満たす機能以外に、食事を介してのコミュニケーション、という機能もあります。コミュニケーションの場として身近な「食卓」の持つ意義や役割と、これからの食生活において「食卓」が持つ力について考えます。また、これからの食生活を営んでいく上で参考となる、「食生活指針」も紹介します。 |
第3回 遠くなった食と農 | ゲスト:田中 秀樹 (広島大学大学院生物圏科学研究科 教授) |
食と農、消費者と生産者の間の距離がかつてなく遠くなってきています。その典型は輸入食品の増加です。そして、農と食の間の加工過程が拡大し、加工度の高い加工食品も増加し、食べ物が複雑になってきました。私たちは植物や動物など、他の「生命」を育て食べているのですが、食べ物が「生命」であるということが、なかなか実感しづらくなってきました。輸入食品や加工食品が増えることにより、私たちの食は豊かに便利になってきていますが、また、問題も起こっています。「人は自然から遠ざかるほど病気が近づいてくる」というゲーテの言葉を、現代の私たちは、もう一度かみしめてみる必要がありそうです。 |
第4回 食の原点をめざして | ゲスト:田中 秀樹 他 |
現代のあらたな食の原点をもとめて、広島県内でも様々な取り組みが行われてきています。遠くなってしまった消費者と生産者の間を結ぶための産直市や、地産地消運動を通しての都市部の人々との交流や地域の活性化の現場を紹介します。また、食べることの意味を見失いがちな現代にあって、食事を作ることから食べる時までの心得を通して、食べること・他の生き物の生命をいただくことの意味を考え、食べ物を見直そうとする精進料理を紹介します。身近な地域での活動を紹介することが、食の問題を身近に捉える機会となることを願っています。
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