審議したのは、7月6日深夜に放送したテレビ番組「ドキュメンタリー解放区/虚像 桐島聡とウーヤン~連続企業爆破事件 半世紀の逃亡~」です。1975年に連続企業爆破事件の容疑者として全国に指名手配され、逃亡から49年後の去年1月、入院先で本名を名乗り、その後死亡した桐島聡を題材としたドキュメンタリー番組です。
【制作担当者の説明】
去年TBSに出向している際この事件が発生し、周辺取材を担当。RCCに戻った後も、桐島が福山市出身であることもあり、取材を続けてきた。日本の犯罪史上に残る人物ながら謎が多く、彼の49年をできるだけ広く理解できる形で伝えたいと番組を制作しました。
【委員の方々からのご意見、ご感想】
- 一辺倒の取材では分からない、この人の人生を丁寧に追っていた。一方で、受け止め方は視聴者によってばらつきが出ると思った。また被害者側が今この事件について何を思っているかも、バランス良く知りたかった。
- 当時の報道がセンセーショナルだったので、番組の企画として興味深いと思った。ドキュメンタリーならではのアプローチで理解が深まったが、最後まで感情移入しにくかった。
- 登場した人たちが、よくここまで話してくれたと思う。「翻弄される」、「出頭してもずっと刑務所にいることになる」などの言葉は、適切ではないとおもった。
- 一番知りたかったのは、「桐島がなぜこの思想に魅せられたのか」と「なぜ49年も逃げられたのか」だったが、そこまではたどり着かなかった。
- 時代背景、感覚をどのぐらいの人が理解しているか。説明がないまま見てしまうと混乱する気がし、放送しない方が良かったという印象。
- こういう事件、こういう時代があったという事を映像として残すことは意味があると思う。
- フィクションで十分だと思った。
- 取材が行き届いていて、構成も優れていた。
- 真摯に向き合ったからこその番組だった。個人的には、受刑者をしっかり取材して、皆で考えるべきことを提示するような番組をいつか作ってほしい。
【番組担当者の返答】
美化してはいけないと前提にして取り組んだが、距離感、バランスが難しいと感じながら取材した。多様な受け止めを意識していた。犯罪や社会問題などを、世の中の人に我がことと感じてもらうためにどうすれば良いか、本気で向き合っていきたい。