審議したのは、10月13日に放送したテレビ番組「日本のチカラ 母を失ったクマ クラウド」です。この番組は、クマの被害が過去最多となる中、ツキノワグマの生態、野生動物保護、人間との共生などについて取材した番組です。
【制作担当者の説明】
日本のチカラの制作は、その年を象徴するような内容にしたいと心がけています。2024年は全国でクマによる被害が過去最多で、クマを飼育している安佐動物公園にも野生のクマが出ました。飼育されているクラウドも、母を失い保護されたツキノワグマです。飼育してみてわかったこと、人とクマの自然界での共存などをテーマに制作しました。
【委員の方々からのご意見、ご感想】
- 感情論では解決しない問題で、そういう現実に向き合う機会を提供するという意味において制作意義があったと感じた。
- 人里に出たクマの駆除とクマを守ること、バランスをとる葛藤が感じられる内容で好感が持てた。
- ツキノワグマは雑食で、本来は人は襲わないが、なぜ人を襲うのか、共生できていたものができないのはどうしてかというときに焦点が定まりにくいという印象を受けた。
- クラウドの棒回しは全国的に大人気となり、それをある意味けん引していたマスコミが、その行為がストレスによるものだったと、見世物化したことを反省したととらえたが、その姿勢は良い。日本は、アニマルライツに対する意識が低いと指摘されるが、動物の環境、ペットの販売などにおいても、問題があると指摘されている。そういう意味でも、見せ方や、それを享受する消費者、見に行くお客の意識も今後考えていく必要があると考えさせられた。
- 風力発電の音や振動が野生動物に対してどのように影響があるかわからないことが関係者の話を聞いて伝わってきた。
- 風力発電は大変大きなもので、なんらかの影響はあるかもしれないがインパクトが大きいので取り扱いも慎重にしてもらいたい。
- クラウドが寝ていることの積極的な意味が、人間でいう心理的安全性が確保されたことだと知り、改めてわかりやすく伝えてもらった。
- 飼育員の畑瀬さんの自然や動物を見るまなざしは、1本筋が通っていてひきつけられた。
- クマの繁殖によって個体数が増加し、それが人里に降りて人間との接触が増えたと考える人もいる。真相がわかれば結論は変わる可能性もある。様々な事情を考慮しないと結論を導くことは難しい。
- 東日本に比べて、西日本はクマの被害が少ない。早い段階で特定鳥獣保護管理計画があったと記憶している、そういった数字なども参考にして欲しい。
【番組担当者の返答】
なぜクマが人を襲うのか、いろいろと調べてもズバッと答えが見つからないため、いくつかの要因を伝えました。これからもこの問題について、見守っていきたい。当時、クラウドの棒回しがストレスだと知らず取り上げて、人気者にした一人として反省しました。中国山地は、クマの被害数は少ない。管理が行き届いていると感じています。