審議したのは、ラジオ特別番組「消えゆく声・ヒロシマを継ぐこと」です。原爆の惨禍を語り継ぐため、2022年度に始まった広島市の家族伝承者制度を取り上げました。第一期生の細川洋さんと、長年積極的に被爆体験を証言し続け去年11月に亡くなった洋さんの父 浩史さんの生前のインタビューを交えながら、過去、現在、未来への思いを考えました。
【制作担当者の説明】
被爆79年、被爆者の平均年齢は、85.58歳になりました。被爆者がいなくなる時代は近づいており、一瞬で日常を奪い、多くの尊い命を奪った原爆を二度と繰り返さないために、この悲劇を伝えていかなければなりません。広島に生まれ育ったが、原爆に向き合うことに対して、理解しつつも、恐れや抵抗がありました。自らの素直な気持ちを表現しながら番組制作しました。
【委員の方々からのご意見、ご感想】
- 被爆者ではない方がどのように語りつぐか、本人のジレンマや県外でのエピソードによって感じた自身の役割など心情の変化がよく描かれていた。
- あえてフォーマルに作らず、原爆のことをあまり知らない若い世代への入り口という視点で番組を聴いた。
- 触れなくていいなら触れたくないという制作者と重なる部分があり、個人的に原爆報道に携わる過程で感じた正直な気持ちの吐露に、ある種の好感が持てた。
- 外にいる人は、継承が大事というが、「語り部になる覚悟を決めた」という言葉に語り始めることにハードルがあり、実現するまでには障害があることもわかった。
- 大事なテーマのため、番組を作る上で、距離感のある人が聴きやすいように工夫が必要である。今回の制作の視点は、一つの工夫と言えるだろう。
- 1945年8月当時、広島に住んでいた一人一人がどのような経験をしたのかという無数の事実に対して、さまざまな方法でアーカイブをしていくことが大切だ。一方で、その事実をどうやって次世代に幅広く継承していくのかというソフト面の課題について垣間見えた。
- 広島市がAIやVRなどを使って継承していくということに対して、懐疑的な気持ちを持っている。人づてで伝えていくことが大きな力を持ちうると感じている。
- 広島市の若い担当者が被爆体験の伝承について試行錯誤していることが伝わってきた。
- 細川洋さんの伝え方の工夫なのか、音声だけだからなのか、深く届く感覚があった。
- 被爆体験の継承が広がってほしいと思うのと同じように、この番組も多くの人が聴く機会があればよい。
- 番組が入門編ということであれば、県内よりも県外の人に聞いてもらうこともいいのではないか。
- 平和を伝えるということ、どう生きるべきかを考えることが中学生に伝わっており、事実には目を覆いたくなるが、思いは伝わっていくという印象を持った。
【番組担当者の返答】
番組制作にあたり、周りに意見を聞くと、私のように資料館に行くことがつらいと感じる人も一定数いました。私ならば原爆の日に放送する特別番組についてどのようにしたら聞いてもらえるかなと考えながら制作しました。細川洋さんは元国語の先生で、グリークラブのメンバーでもあり、父である浩史さんの被爆体験を届けるためにはどうすべきか常に考えていらっしゃいます。年末年始の編成の中で、この番組の再放送を企画しています。
【その他】
11月に行われたJNN系列放送番組審議会近畿中四国地区協議会について、川合委員長が報告しました。