審議したのは、8月6日に放送したテレビ番組「ヒロシマの記録―“地上の地獄”は映像に遺された」です。
原爆投下から2か月後の広島を撮影した記録映像をユネスコの「世界の記憶」として登録を目指す取り組みやフィルムにおさめられた人の戦後の生き方、被爆80年に向けて始動した映像のカラー化作業を追いかけた報道特別番組です。
【制作担当者の説明】
フィルムにどういうものが映っているかを丁寧に伝えるということを心がけました。また、今も続いている国際的な問題や課題に関心を持ってもらえるような手法として映像に色を付けるプロジェクトも進んでおり、その様子も盛り込みました。被爆80年にむけて意思表明となるような番組制作をめざしました。
【委員の方々からのご意見、ご感想】
- 被爆80年に向けて報道各社が知恵を絞る中、被爆者がいない時を念頭におき、いまある映像を残していくことは非常に重要だ。
- 今後、被爆者が自らの体験を語る機会が減っていく中で、映像として残すことの価値が高まると感じた。
- 膨大な量の日誌などの資料の中から息づかいに満ちた正確な記録を拾っている。熱の入った取材で、重要性を再認識させられた。
- インタビューから映像を撮影した人の気概がひしひしと伝わってきた。また、多くの資料の中から選び抜いた制作者の思いが伝わってくるように感じた。
- 社会的に感情が入らないよう撮影するという占領下にあったゆえの制約であったとしても、そのことがかえって圧倒的なリアリティを生んでいるような印象を受けた。そのため、番組制作者の考えや結論は明示しない方が、ドキュメンタリーとして世に問う力が増したのではないか。
- 原爆被害について社の意見をのせて伝えることについて、重要な活動であり、テレビ局の持つ表現の自由と受け止める。さまざまな意見があり、それを交換し合うということが保証されている世の中であってほしい。
- 片仮名のヒロシマには、活動を連想することがあり、イメージが重なる。使用しない方がいいと感じている。
- 家族にも語らず、話もしたくなかったと語られるさまやその内容は胸が痛む。このような気持ちを持った方がたくさんおられたのだろうという思いで視聴した。
- 50年経って初めて証言した方の内容は、放送せず、そのままそっとしてあげたらよかったのではないか。
- 過去の映像利用は許諾があれば問題ない。2年後に亡くなったと聞き、遺言のような証言として受け取れた。
- 映像が日本映画社からRCCに移る経緯を知りたかった。
- ユネスコの「世界の記憶」をよく知らなかったので、スタートラインとしてもうすこし知りたかった。
- 焼け野原の状況は広島市内と想像もできないが、画面に重ねられた地図が役立った。
- 映像のカラー化は世の中に広まっていくうえで重要だと感じた。
- 日本全体で知らなければならないこととして、広島と長崎が一緒になって全国放送になるようなことはないか。
【番組担当者の返答】
RCCが長年取り組んできた原爆フィルムにかかわる取材であるため、問いかけなどではなく、RCCとしての意見でまとめるのがよいと判断しました。片仮名のヒロシマは、日本だけでなく、世界に訴えかけるという意味で使用しました。過去に取材した証言の放送については許諾を得ている内容を放送しました。今後もしっかりと考えて伝えます。映像がRCCにわたった経緯については、被爆50年で番組にしていることや日本映画社の名称が何度か変更になり、詳しくすると混乱を招くと判断し省いてしまいました。初め、映像に地図を載せることをためらったが、つけるとわかりやすくなりました。戦後80年に向けて、広島、長崎、沖縄も含めた戦災の記憶をどのように伝えるか、JNNに提案しています。
【その他】
ラジオ・テレビの局長がそれぞれ秋の改編について説明しました。