審議したのは、8月15日に放送したラジオ番組「小倉さんのバトン~ヒロシマの願い~」です。被爆者で体験を語る活動を続ける小倉桂子さんの取材を一昨年から継続する中、小倉さんの足跡をたどりながら、G7広島サミットの期間中に原爆資料館で各国首脳に体験を語った小倉さんの役割について聞いた特別番組です。
【制作担当者の説明】
世界のジャーナリストから取材を受けたり、自身も招待を受け海外に渡り体験を語ったりする小倉さんは、積極的に発信されています。G7が終わった後の話もお聞きして放送しました。
【委員の方々からのご意見、ご感想】
- 小倉さんの目に見えないプレッシャーは相当なものだったろうと感じますが、対話ができなかった期間があったことも含めて、一人の被爆者の記録を残した貴重な番組だ。
- 被爆の実相を知ることが最初の平和運動だというくだりがあった。最も敷居の低い言葉で核を使用しない、させないに対する一つの力になる腹に落ちる言葉だった。一方で、どこまで為政者に知ってもらうか、使用の抑止力になるかという疑問もあり、課題もあると一言付け加えるだけでも番組のバランスが良くなったのではないか。
- 核保有や核シェアを支持する若者も真面目に現状を考えている。隣国に私たちの常識が通用しない国がある状況を考えると、そういった議論がされるような雰囲気を作っていくのもマスコミの役割と考える。
- 紙芝居の朗読に臨場感があり、最後まで聞いてみたいと思った。小倉さんは、85歳という年齢ながらパソコン、メール、SNSなども使いこなし、小倉さんの違う一面の紹介は良いアプローチだった。
- 各国首脳の反応から手ごたえを感じたという小倉さんの言葉には説得力があり尊い。
- 小倉さんの夫の馨さんについて、「ご主人」といったが、別の言い方が望ましいのではないか。
- 唐澤アナウンサーが広島のメディアの一員として、テーマをもって何かを報道し続ける姿勢は良いことだ。
- タイトルのバトンは、引き継いだ人がそれを伝えていかなくてはいけないという意味とはわかるが、渡した人はそこで走りを止めてしまうので、「バトンを渡す」のは少し早いと感じた。
- 若い人が聞いたら、自分はもっと原爆のことを知ってその怖さを周りの人に伝えなければいけないと素直に受け取れたのでいいタイトルだと感じました。
- 個人的な仲の良さを番組作りに使うことについて、穿った見方をする人はそのために近寄って行ったのかと感じ取られる懸念もある。
- 1時間の番組の中に様々な切り口が詰め込まれ、登場人物が多く感じた。枝葉よりも1本の筋を通して深堀りするほうがよかったのではないか。
- 小倉さんのエネルギッシュな感じが番組を通じて伝わってきました。サミットを通じて小倉さんの人生でどんなことが変わったのかということを聞くことができて、意味のある番組でした。
【番組担当者の返答】
小倉さんが、唐澤アナに託すということは、若いからということではなく、発信する場があり、影響力を持ってくれるだろうと思っていただいていると感じています。小倉馨さんの呼び方については、夫でよかったと感じます。80代半ばの小倉さんは、理論的にまとめる力に卓越した方です。バトンは、小倉さんがおっしゃったので加工することなく小倉さんの思いを生かしました。県外出身の若いアナウンサーが被爆者と向き合うという演出で、小倉さんとコミュニケーションをとるという表現方法をとりました。
【その他】
放送免許が再交付されたこと、その際の総務省からの要請について伝えました。また、中国放送番組基準の一部改正について諮問しました。