審議したのは、8月6日に放送したテレビ番組「少女たちの公式―遠い人へのメッセージ」です。平和公園のそばに「E=MC2」と刻まれた広島市立第一高等女学校(市女=広島市立舟入高校)の慰霊碑があります。市女では、原爆により666人の生徒が犠牲になりました。舟入高校卒業生の河村アナウンサーが歴史をたどった被爆78年の節目に放送した特別番組です。
【制作担当者の説明】
8月6日の日曜日の午前中に放送することが決まり、できるだけ幅広い世代に伝えることを意識しました。若い人たちにも見てもらいたいと思い、原爆で奪われた日常が今の日常と変わらないものだということを印象付けたいと思いました、河村アナウンサーが取材を通して出会った女性の母親の手記を取材者が時間をとって読むことにも挑戦しました。
【委員の方々からのご意見、ご感想】
- 慰霊碑のデザインについて、原爆という言葉が使用できないから公式を使用したことは明かされたが、なぜ公式を抱いているような絵柄になったのか知りたかった。
- 市女の慰霊碑は最も有名な慰霊碑の一つだが、由来について知っているかというと別の話。由来について知らせた上での展開があってもよかったのでは。また、これを取り掛かりにしてサミット首脳が献花する場面とした導入は視聴者を捕まえる意味では成功したと思う。
- 卒業生のアナウンサーが母校を訪ね、亡くなった被爆者やその遺族を訪ね歩くという展開は説得力があり、親近感が生まれ、無理なく引き込まれていった。
- 生徒の生死を名簿に綴る先生の気持ちははかり知れず、またその名簿を大切に保管しながら受け継がれる舟入高校の関係者には教育者としての責任感を感じた。
- ひょっとしたらあったかもしれないロマンスについて、その後取材が進んでいたら知りたい。
- 番組タイトルの「公式」が、番組を貫く意味は分かりにくかった。
- 核兵器の威力、破壊力は語り継がれても、被爆者が高齢化する中、個人が味わった悲惨さ、悲劇を生の言葉で語れなくなる時代がやってきている。広島の放送局として、個人の言葉、ストーリー、悲劇を記録していくという作業は非常に貴重なことと感じる。
- 被爆者の高齢化に伴って、若い人の意識をどうつなげるかについても積極的に考えていってほしい。
- 日常を奪われることの先を語ることはメディアの大切な責務と感じる。
- 当事者、被爆者の方、亡くなっている方の手記の朗読を織り交ぜた作りで、時々手記の鉛筆の文字が映ることは、親しみを感じられ、今の生活と地続きの日常があったと伝えるには効果的な演出だった。
- 日本の周りの国の状況を考えて、原爆投下に対する警鐘を鳴らすのは、誰に対して鳴らすのか番組の中でも示していって欲しい。
- 核抑止ということが平然と語られるが、正しく使うということはどういう意味なのか具体的には語られず答えがないまま終わったと感じた。
- G7で各国首脳が原爆資料館を訪れたことはエポックメイキングなことで、ある意味大成功であったにもかかわらず、広島の報道は物足りなさを感じていると受け取っているが、番組の最後はポジティブに表現してほしかった。
【番組担当者の返答】
原爆はダメと言葉ではいうが、過去のできごととして捉えられており、今のような普通に生活している中に起きたことだと知ってほしかった。原爆投下に対する警鐘はG7の首脳を背景にしてナレーションを入れたが、警鐘は国の為政者に対するメッセージです。紹介した男性はその後県外に出られており、先は追えませんでしたが、放送が終わって同級生という方から連絡をいただき、当時交流があったことは分かりました。慰霊碑の背景は、核は人類にとって繁栄のための革命だが、少女たちはそれにより犠牲になった。どうか安らかに眠って欲しいという意味が込められていると聞きました。広島、被爆者が求めるものが核兵器廃絶であり、ここにつながらなかったものを成功とは言いにくいと考えました。
【その他】
ラジオ・テレビ局長がそれぞれ秋改編について説明しました。