審議したのは、1月23日に放送したテレビ番組「受験並走ドラマ フューチャー!フューチャー!」です。実際の大学受験スケジュールとドラマが同時進行するような1話3分、全9話のミニドラマでした。番組は、9話をすべてつないだ完全版。
【制作担当者の説明】
近畿大学工学部と広告代理店、東京の制作会社とともに制作した番組です。ミニドラマは、2019年に手掛けた「リリーフドラマ」、2022年の「叫ばないと生きていけない」から3作目でした。普段は、「元就。」などバラエティ番組や情報番組を制作していますが、ドラマは準備にかかる時間がこれらの比ではなく、制作班、営業担当、デスクなどテレビ局総動員で制作に挑みました。制作した後の達成感は比べがたいものがあり、思い入れのある作品になりました。
【委員の方々からのご意見、ご感想】
- 1話3分と聞いて、どこに切れ目があったのかあまりわからないくらい30分もののように見られて、おもしろかった。
- 短く3分に区切るため、高い質のドラマを作ることに苦労があるのではないか。
- 通しで見たとき、疾走感、ドライブ感があり、新しい事象が次々と起こり、飽きずに最後まで引き込まれるように見ることができた。元のドラマは3分なので、まとめたものは意図とは違う結果かもしれないが、短い時間が興味を持続する一つの尺度とすると、それが引き付ける力になったのではないか。
- 大林監督の尾道三部作、SFの学園もの、未来を書き換える「ターミネーター」など、内容は一つのパターンとして受け取れるものだが、受験並走と言いつつ、主人公の受験の先の成長過程を描く、よくできたプロットと感じた。
- 全体的にコミカルで若い出演者が男性も女性もさわやかでかわいらしい。映画作りを意識した映像のように感じた。
- 近未来的な舞台セットとして、広島市清掃局の「中工場」を使う映像作品は、今後も増えていくのではないか。
- 地方局が制作するドラマは原爆関係以外目にしたことがなかったが、今後も継続すればおもしろいのではないか。試みのおもしろさを感じました。
- どのように番組宣伝をしたのですか。
- 先生が主演の女子生徒を下の名前で呼び、担当の部屋に呼び出すシーンがあったが、今、教育関係は気を使っている内容。また、男性が女性を「おまえ」と呼んだり、無造作に頭を触ったりする表現は、現代の倫理観では減っているシーンだと感じた。
- 舞台が尾道で、両親が広島弁を感じる表現に対して、主人公は標準語なのが気になった。
- 若い世代は、時間の消費に対して効率性を重んじる中で、長い映像は高速視聴すると聞く。3分のショートドラマに重きを置いたのは画期的だと感じる。
- ドラマの撮影場所が、県内の知っているところが映ると純粋にうれしく、自らの郷土愛も感じた。
- 大切な受験当日に猫を助ける優しい主人公を描き、その女性が将来の平和を目指すものを作っていくストーリーだと受け取った。よく作り込まれたドラマでした。
【番組担当者の返答】
放送時間の3分は、続けて見ていただくにはジレンマを感じますが、ターゲットは高校生で、この年代の若者はYouTubeやティックトックなど短い映像を好むところがあります。YouTubeでも見られるようにし、短さが受け入れられ、全9話合計で100万再生されました。走る動きなどを取り入れ、さわやかさや動きを出す演出をしました。一方で、少し早口というマイナス面もありました。放送にとどまらない配信も意識し、SNSを活用して広がりを持たせる宣伝活動でした。方言は、制作側でも議論しましたが、断念しました。出演者の行動や仕草はドラマではリアリティを作る大切な部分で、その内容はアップデートしていかなければならない。今回、東京のカメラマンが撮影した尾道や東広島市の街並みは、色味や視点など広島に住んでいるものとして学びがありました。