審議したのは、11月27日に放送したラジオ番組「生涯野球監督 迫田穆成~終わりなき情熱」です。主将として甲子園で全国制覇、現在は、83歳にして高校野球の現役監督を務め、ユーチューバーにも挑戦する迫田穆成さんを追った番組です。第77回文化庁芸術祭賞 ラジオ部門大賞を受賞しました。
【制作担当者の説明】
迫田さんは、監督としても母校である広島商業高校を甲子園での優勝に導き、選手、監督で全国制覇を成し遂げた名将です。6歳の時に被爆しており、不安な戦後を生き抜く中で、原爆被害から復興過程にあった広島の人々を勇気づけました。83歳の今もなお、現役監督としてチームをベスト16に導くなどその情熱あふれる挑戦を追いました。
【委員の方々からのご意見、ご感想】
- 周りの広島ではおなじみの達川さんら関係者の声があることで番組が立体的に感じられた。
- 甲子園で優勝して広島に凱旋したときの音声を初めて聞き、素材が残ってるのは、地域でやっている放送局の強みだと感じました。
- 怪物江川との戦いなどおもしろさとして、エピソードとしてボリュームがあったが、現在の竹原高校の話ももっと聞きたかった。興味をかきたてられた。
- 83歳で現役監督、年齢差を超えて生徒がついてきているのがすごい。
- 大変な力作。原爆、広商野球と戦後の広島が詰まっている番組だった。
- 長く監督を続けているので、番組の構成が時系列になっていた。少し冗長に感じられました。
- 何か所か指導力の秘密が聞けた。聞きごたえがありました。
- 迫田監督兄弟が名将とは知っていたが、どんな方かは知らなかった。達川さんや迫田監督の弟の声を拾ったことによって、迫田監督の実像が豊かに浮かび上がった。
- 多くの高校球児に対して、レギュラーになれない選手も指導者になれる。そういう教育、指導をしているという話を興味深く聞きました。
- 言葉、体験の重みは、そうでない方と決定的に違うものがある。野球の世界においても違うことを改めて感じた。幼少期の原点が野球に全力をかける幸せを実感をさせ、それが原動力となり長年にわたり高校野球の世界でがんばってこられたと想像した。
- 勝利への執念のすさまじさには、漫画の世界を読むような面白さを感じた。
- 迫田さんが教育者として、地域の一員として、地域おこしにかかわろうとする熱意をすばらしいと感じた。
- プロ選手以外の道で、大好きな野球と向き合う場を見つけられ、全身全霊をかけて向き合ってこられた。その姿勢は、教え子の方々にも伝わっていっただろう。高校野球で勝ちに拘るあり方には、賛否もあるかも知れないが、みんなで何かを成し遂げるという部活本来の教育的意味がそこに見いだせるように感じた。
- 迫田監督の多角的、長期的な視点による独自の戦略戦術論は、リーダーの普遍的な姿を垣間見た気がしました。
【番組担当者の返答】
迫田さんの常に創意工夫をすることがテーマの一つでもあったため、強かった広商が弱くなる、同じことをやっていると通じなくなっていくことを表現するために、時間を割きました。また、一番山があるところにボリュームを持っていき楽しんでいただくことを考えました。意思を伝えることが大切なので、喋ってだめなら、メールで、ふろに入りながら話を聞いてほしいと思うような頭が柔らかい人です。広商の野球がおもしろいエピソードがたくさんあったので入れたいと思いましたが、欲張りすぎるのはやめました。迫田監督の教えが社会でどのように役立ったか教え子のインタビューも録音していましたが、入りませんでした。