審議したのは、8月6日に放送したラジオ番組「ヒロシマクライシス~私は伝え続ける~」です。この番組は、国際秩序が揺らぐ中、核廃絶という理想と国際安全保障の現実との狭間で逆風にさらされている広島のメッセージを改めて考えることをテーマにした番組です。
【制作担当者の説明】
キャスティングには、群馬県出身で入社2年目の唐澤恋花アナウンサーを起用しました。インタビューは、外務省を経て、広島市立大学国際学部ののち、東海大学政治経済学部の西田竜也教授とその学生、「核政策を知りたい広島若者有権者の会(カクワカ広島)」の田中美穂さん。また、広島市東区で8歳の時に被爆され、現在は平和のための広島通訳者グループ代表、小倉桂子さんの体験談と現状に対する思いで構成しました。
【委員の方々からのご意見、ご感想】
- 被爆者の小倉さんのお話が簡潔で明瞭。心を揺さぶられるような部分があって聞きやすい。すばらしい声とお話の仕方と内容だった。
- 小倉さんの言葉は非常に抑制的で重い。一言一言がズシンとくるような重みを持っていた。広島の貴重な音声の記録になっていくだろう。
- 広島ではない群馬出身のアナウンサーが、素直な言葉で言ったいろいろな感想を、好感を持ってリアリティを持って聞くことができました。
- 東海大学の学生が言ったような意見は広島の大学で聞いても似たような結果になるかもしれないと感じた。カクワカ広島のように一部の若い人は活動をしているが、ほとんどの人は無関心というのは、広島も他の地域も同じだと感じる。広島上げ、他県下げになっており、広島のメディアがするには手前味噌が過ぎるのではないか。
- 他県の人にももっと聞いてもらいたい番組だった。
- 広島のメディアとして、核兵器というものが何をもたらすのか。大きな爆弾で、人間の破壊をもたらすものだということを伝え続けなければならないことを、改めて考えさせられた番組だったと思います。
- 制作にあたって、唐澤アナウンサーの日頃の疑問や広島に来ての戸惑いをどのくらい番組に反映させたのか。番組の作り手として、彼女の思いや心の変遷をどこまで出そうとされたのか知りたい。
- 唐澤アナウンサーが自分の経験や思いをもう少し話すと小倉さんとのやりとりが重層的になったのではないか。
- 小倉さんは他者を知ることで、ご自身が開かれていくという経験、一緒に考えようというところにたどりついたという経験を聞き、胸を打たれました。
- 日本がアメリカの核の傘の下になかったとしたらどうなるのか。真面目に平和について考えている若者がもっと考えられる状況になるためにも現実的な議論をするとまるで悪という風潮からメディア側は脱却して欲しい。
- 核兵器を持つ持たないという議論になると、相手が持ってるかという話になっていく。そうではなく、その怖さを今の世代に地道に伝えていくということの重要性を感じた。
- 県内向けの番組ですが、クライシスとするなら県外や海外に向けて、どうメッセージを出すかを期待する。このクライシスは、広島のメッセージがクライシスと捉えられた。さらに具体策や次へ向けての期待をしたい。
【番組担当者の返答】
東海大学の学生インタビューは、日頃から国際的な話をしている授業の一環で聞いた内容でしたが、彼らの意見をつないでしまったことで、誘導的に聞こえたのであればナレーションやつなぎ方をもう少し配慮すればよかった。唐澤アナウンサーは、原爆の日の企画にあまりかかわったことがないので勉強してもらいたいという趣旨でキャスティングしました。来年は、広島でサミットがあります。その後8月6日を、迎えるという大きな流れの中で、小倉さんがどんな動きをされるか、どう考えるかを唐澤さんに追いかけてもらおうと思っています。核兵器を使わない、使うとこのようになるということをお伝えする。原爆の悲惨さや、原爆がもたらす差別・偏見など、地道に訴えていくしかないという思いがありました。
【その他】
2022年上半期の番組種別報告をし、了承されました。