審議したのは、8月6日に放送したテレビ番組「それでも核兵器要りますか」です。7月にオーストリアのウイ―ンで行われた核兵器禁止条約締約国会議で、参加した広島の高校生を取材。また、被爆直後に撮影されたフィルムの子どもが77年経って証言を始めたエピソードも紹介しました。
【制作担当者の説明】
ウクライナ侵攻以降、核兵器を取り巻く状況が厳しい局面になっています。国内でも核配備を求める声があがり、核兵器がどういうものか伝わっていないのではないかと感じました。放射線の被害、生き残った人も数カ月後、数年後に放射線の被害によって亡くなり、今なお苦しんでいる人もいると伝わっていないのではないかと感じ、RCCのライブラリーにある被爆者が訴えてきた貴重な声をもう一度聞きながら、締約国会議の現在の動きとリンクさせて番組を制作したいと考えました。
【委員の方々からのご意見、ご感想】
- 1945年と90年代、2000年代、そして現在をつなぐ形で作られた力作でした。
- 番組タイトルの「それでも」に相当するのが、番組前半に惜しみなく使われていた過去の映像で、当時、どういったことが起きたのかを今を生きる私達現代の人が知る上で、映像の持つ力を改めて実感しました。白黒の映像、アナログ放送時代の映像、今見ると証言が多く聞けた時代で、被爆者の高齢化が進む中、貴重な資料映像だと感じました。
- 番組内で締約国会議の全体像を伝えてほしかった。
- 締約国会議の映像で、黒い雨を飲んだかどうかを尋ね、放射線チェックを受ける映像がありましたが、何のためのデモンストレーションだったのか、皮肉にしては悪趣味に感じました。補足説明があればよかった。
- ウィーンの会場で報道陣のほとんどが日本のメディアだったとあったが、それはなぜか。この疑問に対する説明があると、この問題を取り巻く状況が構造的に理解できたのではないか。国連の中満事務次長が日本の高校生に対してかけた言葉は、どういうことか、さらっと流すのではなく、丁寧に拾い上げ、真意に迫ることも考えてほしい。
- 中満事務次長の話は、高校生に向けてというよりは、自分自身も含めた日本人全員に向けて言われているような気もしました。勉強がない中で、平和運動、核軍縮はダメと言うだけでは前に進まない問題だと言われているように感じました。
- 核兵器禁止条約締約国会議にオブザーバー参加しなかった日本政府関係者へ若者がインタビューするシーンがあり、この関係者は型通りの内容を答えましたが、これを聞いた若者へも取材をし、伝えてほしかった。
- 福山市から平和大使になった高校生について、大使に選ばれた理由や、映像の中の子どもがどうして自分だと知ることができたのかなど、いきさつや背景の解説があれば良かった。
- 被爆直後の映像に映っていた子どもの映像が何度も流れました。気になる映像でしたが、どういう時に流れたものか、背景がわからず最後まで疑問が残りました。
- 被爆者の声が何度か出てきたが、だれのどのようなタイミングの声なのかが気になりました。
- 広島に暮らしていると原爆被害、放射線被害など平和教育の中で接する機会があったと思うが、他県の人や他県から来た人は、イメージがないことも改めて思いました。啓発という形で有意義でした。
- 唯一の戦争被爆国である日本が、いかに外国に向けてアピールできていないか、オブザーバーにも参加していないとこととつながり、政治の話になるのではないか。ヒューマニズムの話は、小・中学生ぐらいまでで、現実の行動はどうすべきか広島から発信してほしい。
【番組担当者の返答】
放射線チェックは、核兵器が使われてしまうと放射線被害を調べなければいけないという、赤十字社のデモンストレーションで、非人道性の象徴的な部分と考えて放送しました。海外メディアの関心は、現地で詳しく取材はできませんでしたが、アメリカなど核保有国が参加していない点で、大手メディアの取材がなく、広がりがないことも原因だという人もいて、状況を丁寧に説明すればよかった。政府関係者に質問をなげかけたのは広島出身の大学生で、インタビューもしているのですが、時間の関係で割愛した部分でした。
あの子どもは、被爆50年に、映像に映る人達が当時どのような生活をされているのか探し、取材するプロジェクトがあり、番組内で呼びかけていました。ほとんどの人の所在はたどれましたが、あの子どもはたどれず、たどれなかった人の中でも思い入れのある少年だったと訪ねて行った記者から聞いています。
被爆者の声については、何を伝えたいか言葉を聞いてほしいという気持ちがありました。映像が出てくるとその人の背景などを入れたくなるので、メッセージを聞いてもらいたいという意図がありました。
今回は今の国際情勢の中で、本当に核兵器についてが最も伝えたかったところでした。行動に移すことについては、これから作っていけたらと思っています。
【その他】
今回の審議会から大谷委員が加わりました。また、ラジオ・テレビ両局長から、秋の改編について説明をしました。