審議したのは、7月3日に放送した『日本のチカラ「被爆樹木の声を聴く~広島の永遠のみどり~」』です。爆心地から2キロ以内で被爆し、現在広島市に約160ある被爆樹木の保存活動をしている樹木医や戦争体験を伝える被爆者で被爆樹木とかかわり暮らす人たちをテーマにした作品です。
【制作担当者の説明】
教育振興を目的に設立した日本民間放送教育協会に加盟する全国33の放送局でネットしている番組で、その年の出来事を反映した内容で映像にこだわり制作されている番組です。初めて原爆、中でも被爆樹木をテーマに制作しました。いつか美しい広島の緑を描きたいと思っていましたが、ウクライナ侵攻のニュースをみると黒やグレーで、緑は平和の象徴と感じて、いま、緑をテーマに描きたい、そして、原爆に遭ってもなお生き続ける被爆樹木について伝えたいと考えました。今後、60分の番組にして放送したいと考えていることから、アドバイスもいただきたい。
【委員の方々からのご意見、ご感想】
- 被爆樹木の保存は、被爆の事実を伝え続ける活動の一環と位置付けられる。77年前、原爆に遭っても生き続けていて、それが目の前にあることは、原爆を実感させる力が大きいと感じました。
- 被爆樹木を初めて知る人にとって、良い企画だった。樹木医という職業も初めて知った。原爆の影響や痕跡について解説がわかりやすかった。
- 160ある被爆樹木が、どこに、どんな木があり、どのようにケアされているか、全体像が知りたかった。
- 被爆樹木の保存についてバトンタッチしていきたいと樹木医が言っていたが、後継者がいるのであれば、紹介があったらよかった。また、行政の援助についても気になった。
- 広島市役所に被爆ソメイヨシノがあるとあった。ソメイヨシノは弱い木で、40~50年もすると弱ってくるため、被爆ソメイヨシノがあるということに驚きました。
- 中根アナウンサーのナレーションの声のトーンが番組の雰囲気に合っていてよかった。
- 原爆のことを知らない人が増えている現在、後世の人が原爆を多面的に知る上で、このようなアプローチがあることを伝える良い機会になったと思う。
- 番組の中で放送されたCMに違和感があった。内容は選べないのだろうか。
- 被爆樹木を守るには、あまり手をかけない、お金をかけないという樹木医のコメントがあったが、どのようなところを重点的にしていくのか匠の技について解説が聞きたかった。
- 被爆樹木とウクライナ侵攻の描き方は工夫が必要と感じた。
- ロシアとウクライナが戦争をしている中、平和や被爆体験を伝えていくことの重要性を訴えていこうということが伝わってきた。
- 鶴見橋のたもとの柳を冬枯れと緑の時期に撮影した映像があったが、美しく象徴的に撮影されており、すばらしかった。
- 被爆樹木がパンフルートになったというエピソードについて、いいエピソードで演奏もすばらしかったが、なぜパンフルートなのか、なぜ千田小学校なのかという説明があればよかった。
【番組担当者の返答】
160ある被爆樹木マップのような全体像がわかるものを次回は作ってみたい。ウクライナの映像を見ると町が瓦礫と化している場所があり、戦争イコール破壊だが、一方で、焼け野原から復興した平和な広島は緑いっぱいになっている。緑は復興の象徴でもあることを伝えたかった。被爆樹木に対して、どのような行政の後押しがあるかや、パンフルートについての説明は、1時間番組にするときに、盛り込みたい要素です。