審議したのは、2月20日に放送された『日本のチカラ「これがおれたちの伝統~人と鳥がつないだ450年~」』です。8月に全国放送された番組のラストを再編集して時制を直して再放送しました。三次の夏の風物詩でもある鵜飼を四季折々の風景を盛り込み、自然災害やコロナウイルス感染拡大に翻弄されながらも開催を目指す人々を追った番組です。
【制作担当者の説明】
日本のチカラは全国放送の番組で、既存のネットワークを超えて子どもや教育界のためになるドキュメンタリーを放送することを目的に制作しています。RCCは、その年を象徴するような内容が描きたいという思いで制作しています。450年続く伝統の漁法で観光の一つにもなっている三次の鵜飼が2021年、開催できなくなりました。番組では、伝統行事の復活にかける人々の日々の営みに密着しました。
【委員の方々からのご意見、ご感想】
- 歴史ある鵜飼が、後継者不足や昨今のコロナに翻弄されながらも、熱い思いを持った鵜匠達が伝統の継承に取り組んでいることがよく分かりました。伝統を絶やしたくないという気持ちが伝わり、登場人物の思いにも共感を覚えました。
- 存続や継承に関わる根本的な問題はコロナ禍以前からあり、なぜ遊覧船の乗客が低迷を続けたのか背景にある問題などには触れず、足元のコロナ禍や直前に振った大雨に焦点を当てても苦境の構造が見えないのではないかという気がしました。
- 鵜匠の鵜に対する愛情が伝わってくるが、野生の鳥を捕まえて訓練することで本当に信頼関係が生まれるのか、生まれるとしたらどんな場面でそう感じられるのかが描かれていると一層の説得力が生まれたのではないか。
- 450年前の発祥の経緯やその後の発展などについて触れられていると「伝統」がよりリアルに伝わったのではないか。長良川の鵜飼いとの違いをもっと知りたかった。
- 鵜飼を見たことがなく、実際のシーンをもっと見たかった。夜なので見えにくかったり撮影が難しかったりすると感じた。
- 映像がすごくきれいだった。夜の川に、火を焚いてチラチラ揺れるシーンなど、大変美しかった。
- 豪雨の後の泥色の川と普段の清流を1つの番組の中で作品として見ることによって、災害の残酷さと川の美しさが際立ち印象的だった。
- 番組の中で鵜匠も遊覧船の女性の船頭も印象的に描かれていたので、「おれたち」とつけられたタイトルにネガティブな印象を持ちました。
- 地元を出て功成り名遂げた人を取り上げることもメディアの役割かもしれないが、地元に残って伝統や祭りなどの文化、営みを守っていく、町内会の中心的な若手になるようなひとを取り上げていくことも大きな意味があることだと感じている。
【番組担当者の返答】
コロナ禍や自然災害などを問題にしたのは限られた時間の中でわかりやすいゴールを求めました。観光客低迷については、レジャーの多様化などさまざまな社会的な原因があると感じています。映像をほめていただいたことは嬉しい。遊覧船の船頭、松木さんの取材によって番組に厚みが増し、イキイキとした内容になったことは確か。タイトルを「三次の伝統」とすればよかったと感じます。地元メディアの役割について、地元で頑張っている人を紹介することは大切なこと、これからも紹介していきたい。
【その他】
4月にRCC、およびグループ会社に所属するすべての人を対象に行った「放送倫理・人権・差別に関する社内勉強会」について報告しました。