審議したのは、8月6日に放送したテレビ番組 「描く 被爆76年の広島から」です。被爆76年の日に放送した原爆の日特別番組です。
【制作担当者の説明】
原爆の記憶を残して伝えていくことは、報道機関だけでなく、被爆者や原爆資料館などでかかわる人たちの共通の課題です。継承について、記者として制作者本人も悩んでおり、継承について思いを持ちつつ団体などに所属していない人に聞きました。できるだけ自然体で聞くことを心がけ、その思いを伝えようと制作しました。
【委員の方々からのご意見、ご感想】
- 記者のエッセイやドキュメンタリーのように捉え、温かい人柄が伝わってきた。広島とは縁もゆかりもない中、広島の問題に触れ、活動を始められた人たちの話にジーンとしながらも、親戚には被爆者もいる自分を振り返って、何をすべきだろうかと考えさせられた。
- 1時間の番組の中にたくさんの人が出てきて、話を盛り込みすぎたのではないか。バラエティに富んでいるとも言えるが、総花的な印象があった。
- 自然体という生ものを投げかけられて視聴者は解釈が難しいのではないかと感じた。一方で、広島に縁のない人が、仕事で赴任したことで自分の柱としてやっていきたいという思いになったというヒューマンストーリーがあるので、そのあたりを強調してもよかったのではないか。
- リアリティのある内容で、体験していない者には言うことができないような体験談が多く、見ごたえがあった。
- 何を伝えたいか、コンセプトを明らかにした方が記録番組としては好ましいのだろうが、広島とは直接関係がなかった人が広島が抱える問題をつないでいこうとしていることに対し、ありがたい気持ちになった。
- 被爆の惨状を写真や証言で直接的に伝えることも大事な取り組みだが、原爆によって失われたものをリアルに描くということも原爆の悲惨さを理解する有意義な方法だと感じました。原爆投下前の川でシジミをとっている日常の絵が非常にほのぼのとしていて、光の当て方、アプローチの仕方に感心した。こういう日常を知れば知るほど、失われたものがリアルに伝わってくるところがあると感じた。
- 高齢の男性が話す場面で聞き取りにくいところは、文字を補ってほしい。
- 記者同士が話す場面で「ハチロク」という表現が出てきました。8月6日のことを言っているのでしょうが、わからなかった。番組の中の文脈では理解がしにくいと感じた。
- 亡くなった方のブラウスを描いた大学生が県外にいながらなぜその絵を描くことになったのか、記者がなぜ遺骨収集を手伝うのかなど、もう少し深く紹介してほしかった。
- 場面と場面を転換するための記者同士の話は、息継ぎのような形で置かれたのだろうが、その会話が次の話題とかみ合っていない部分があったり、登場する人が紹介されずに話が進行する場面があったりした。見る側にとって小さなストレスはない方が良い。
- 「嫁」という表現に違和感を覚えた。本筋には関係のない場面だったため、あえて入れるのは無頓着な印象を受けた。
- テレビ番組としてカメラアングルやズームが印象的だった。普段あまり見ないようなアングルがあり、特徴的で、制作者の思いを感じた。
- 県外出身の制作者を番組の中に置く、当事者的な意識を織り込んだ内容は、地元広島の人たちの使命を改めて浮き彫りにし、考えさせられた。
【番組担当者の返答】
番組内に登場する人を多くしたのは、見る人、見る人によって共感できる場面があればいいとの思いからです。
ブレイクポイントとして同僚との会話をいれました、メリハリをつける意味がありましたが、多用しました。言葉の表現など配慮が至らない部分がありました。遺骨を探すのは、被爆者でこの春亡くなられた岡田さんのお姉さんが見つかっていないため、何か手がかりが見つかったら良いという思いがあります。
【その他】
ラジオ・テレビ両局長から、秋の改編について説明をしました。