第465回中国放送番組審議会の審議の概要

(於 中国放送役員会議室)

第465回中国放送番組審議会は、7月23日午後3時から開かれました。
今回は、昨年の8月6日に放送されたラジオ報道番組「イギジャ〜韓国人・元徴用工被爆者裁判〜」の審議を行いました。
この番組は、平成14年度民間放送連盟賞の中四国審査会で第1位に選ばれた作品で、選出理由は、「今声を大きくして伝えなければならない重要な問題を取り上げたメディアとしての姿勢・使命を高く評価した」ということです。

(委員長)
では、番組審議を行いますが、この番組のプロデューサーを務めた大原ラジオ制作部長に内容の説明をお願いします。

(大原P)
テーマとなっている三菱徴用工の問題は、RCCが長く取材に取り組んできたテーマです。昨年、このテーマでドキュメンタリー番組を制作したいとの企画が上がり、これまでとは異なり若い支援者をメインに取り上げています。番組は、被爆地広島がかつては軍都であったがために起きた負、マイナスの遺産を改めて見つめ直すとともに、戦争を全く知らない世代の支援者が、隣の国との真の友好関係を築く為に如何に情熱を注いでいるかという、戦後補償に対する一つの接し方を広く訴えることに力を入れたつもりです。イギジャとは、勝つ勝利するという意味です。

(委員長)
それでは、番組を視聴します。

<番組視聴 44分>

順に、御意見なり感想を伺います。
  • (A委員)
    このテーマは、以前私自身も取材したことがありますが、映像でも新聞でも真実を伝えることが難しいテーマだと思います。
    久しぶりにラジオを聞きましたが、素朴で素直に割とストレートに思いが伝わった気がします。広島のマスコミとしては、ずーっと繰り返し伝えていかなければいけないテーマだと思います。1970年代だった思いますが、強制連行の問題が全国的に取り上げられて以降いくつか波があったが、高齢化が進む中で残された時間が無い。ということで新聞でも在外被爆者の問題を取り上げ、現在韓国編に一生懸命取組んでいるところです。全体としてはよかったと思いますが1点注文をつけるとしたら、主人公の思いはストレートに伝わったが、支援する会のメンバー達と韓国人被爆者との関わり、具体的にどのような活動をしているのか繋がりが描かれていれば・・・・・
    との感想を持ちました。

  • (B委員)
    ラジオ番組はじっくりモノを考えさせるにはいいなと感じた。番組の中味も、我々が詳しく知らなかった問題を教えてくれる。特に若い人達に知らせるという大きな意味があると思います。と同時に日本人として何か答を出さなければならない大きな問題を抱えている。それらの問題を考えさせるという意味からも訴えるものがあったと思う。
    ただ、番組としては支援する会の人達と裁判に訴えた韓国人元徴用工の人達との交流というか関わりについて、少しは触れているが中途半端、戦争責任だとか裁判そのもの、或いは戦後補償といった重い問題と巧く馴染んでいない感じがした。
    それから、意見の分かれる所だと思いますが、私は途中で挿入されたシンガーソングライターの歌が合わない気がした。元徴用工の人達の高齢化が進んでいるので、早く解決しなくてはならないと問題提起しているが、解決しない問題点はどこにあるのか取材を通してヒントを与えるような何かが有ればもっとよかったと思います。

  • (C委員)
    この時期、在広各局が制作した8・6関連の番組を見ますが、原爆投下されたことから被害者の立場から作られるケースが多い。このラジオ番組は、逆に加害者の立場と被爆者という同じ立場、国家補償という視点から見れば故なくこの人達を排除している加害者の立場になると言う意味で、従来の加害者と被害者の視点とは違う切り口で制作しており興味深く聞けた。
    50年間放っておいた者の責任という言葉が出てくるが、倫理的にも心苦しくなるし、過去の歴史的経緯を考えると真の国際理解など本当は出来ないのではないかと思わせる所も出てきます。そのような指摘もされて非常に耳の痛いところです。夏原さんたちを中心に裁判の支援ということがメインになっている。怒られるかも知れませんが、支援者の方々はイギジャと言いながら、必ずしも訴訟での勝利を意味しておられないのではないか、裁判への支援を通じて韓国の方々と心を通い合わせるというか、本当の意味で人と人との触れ合いを形成していく。それがイギジャ、勝ったという意味なのかと思わせて貰いました。

  • (D委員)
    全体として、戦争のむごさ惨めさが伝わってきた。戦争の後遺症として、韓国から強制連行された労働者がこういうことになりました。その間の未払い賃金のこと、補償のことそして帰国後の生活のことなどもしっかりと伝えられていた。このような事実があり、それが今も引きずられて問題として残っている。
    ナレーションを担当したアナウンサーが、支援者の夏原さんのこと、日本への補償問題、裁判支援への意気込み或いは、少しだが世界平和の呼びかけ等しっかりと伝えていた。番組を聞いた人に感銘を与えたのではないかと思う。
    半世紀前の戦争のことですが、加害者としての国と企業そして被害者両方に解決されていない問題が沢山あるんだなと、改めて戦争について考えさせられる番組だったと思います。

  • (E委員)
    番組の中味については、良く出来ていると思います。私自身中国からの引揚者で、場合によれば残留孤児になっていたかもしれない。そこで、このような問題は、自分の身に置き換えて考えることが多いのですが、根底に人種差別的なところが有るのでしょうか、法律というのは冷たいものだなと感じる。
    また、この問題を長い間棚上げにしていたことの方が問題だと思う。難しいとは思いますが、人間としての権利の観点から、日本人とか韓国人ということではなく地球人として何が出来るかだと思う。
    音楽については、弾き語りをいれることで若い人達に巧く伝わるとすれば手法として良いのではないか。
    残念なのは、このような支援運動などに関心の有る人に連絡方法等が伝えられていれば、なお良かったと思う。

  • (委員長)
    このテーマは、日本人である限り避けて通れない。来年も再来年も色んな形で取り上げられる。この番組は、そういう意味からも重要な貢献をしている。
    個人的に、学会等国際的な活動をしていますと、親の罪を子供が背負わなければならない状況に直面します。日本の戦争責任は確かにある訳で、誰が悪かったのか日本人全体の問題としてきっちりと処理しなくてはいけない。1億2000万人総ザンゲ状態がずーっと続いている。どれほど日本人1人1人が惨めな思いをしているかを痛感している。国際問題以前に国内問題として、きちっと反省と批判をして処理しなくてはならない。それをしていないから、ずーっと言われ続けることになる。いずれにしても違った形のアジア観を持たないと足元を掬われることになる。
    等の御意見ご感想を頂きました。

平成14年7月23日
中国放送番組審議会
出席委員(敬称略)
委員長
上田 良文
 
副委員長
桑田 整
 
委  員
上田みどり
久笠 信雄

丸本たかし
青木 暢之
以上、6名の方々です。

以  上

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